冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

距離を見誤ってしまったと正臣は後悔する。

香世を目の前にすると衝動を抑えきれない。

精神年齢15歳の香世は初心(ウブ)でどうしようも無く可愛い。

頭をポンポンと撫ぜて落ち着かせる。

「二階堂様!よろしくお願いします。」
玄関から草履を持って戻って来た龍一が
元気に挨拶をして、庭先に下りる。

「よし。じゃあ、子供用の竹刀があるから握ってみろ。」

正臣は既に龍一の為の竹刀を用意してくれていたらしい。

香世にはもう少し休んでいろと、
言って側から離れて行ってしまう。

しばらく龍一と正臣を眺めていたが、
まだ体が本調子じゃないせいか知らぬ間に
柱に持たれてうとうととしてしまう。

香世が柱からずるりと倒れる瞬間に
駆け寄って来た正臣が引き寄せぎゅっと抱きしめ、寸前で頭を打たずに済んだ。

「香世を寝かせて来るから素振りをしていろ。」
と龍一に指示を出し、
正臣は香世を抱き上げ居間に行き、
座布団の上に寝かして毛布を掛ける。

ホッとしてハァーとため息を吐く。

こんなちょっとの事で香世にもしもの事があったらと、この先1か月が不安でどうしようもない。

人の心配も知らないで、
すやすや寝ている香世の寝顔を見つめて、
唇にそっと口付けをする。