冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

沈んだ香世の表情を見て正臣はしまったと
思う。

香世が料理をするようになったのはきっと、
家が成り立たなくなってからなんだ…。

「また1から学べば良いではないか。」
香世に声をかけるが、気休め程度にしかならない事は重々分かっている。

それでも香世は少し微笑み頷いてくれる。

料理が机に所狭しと並び贅沢な夕食になった。
龍一は好き嫌いなくなんでも食べた。
香世も久しぶりの家庭料理に、
沈んでいた気持ちも浮上して楽しく食べる事が出来た。

正臣は龍一の世話ばかりをしてる香世が
余り食べてない事を心配し、
分かっているかのように香世の好きな物ばかり、小皿に取り分けてくれた。

姉は好きな物ばかりを選び取り、
デザートには洋菓子店のバターケーキまで
出て来て、とても贅沢な宴になった。

全て食べ終えてさっきの続きの将棋で、正臣と龍一は風呂の順番を決める。

崩し将棋は小さな指の子供の方が有利で、正臣は負けてしまった。

「僕、香世姉様と一緒にお風呂に入りたい。」
龍一がそう香世に甘えてくる。