香世が目を覚ました時、
既に辺りは暗くなっていた。

額にある濡れ手ぬぐいをそっと取る。
まだそれは冷たくて、
きっと誰かが絶えず取り替えてくれた事が伺われる。

あっ!と思って慌てて隣の布団を覗くと、
寝ていたはずの龍一は既に居なくて、
驚き慌てて身なりを整える。

耳をすますと隣から子供のはしゃぐ声が聞こえてホッとする。

おずおずと立ち上がり部屋を出て隣の部屋へ向かう。

襖を開けて香世は廊下に正座をして手を付く。

「あの、ごめんなさい。
随分長く寝てしまった様で…
お待たせして申し訳ありません。」
頭を下げて非礼を謝る。

サッと正臣は立ち上がり、香世の側まで来たかと、思うと手を引いて立ち上がらせて明るい部屋の中に導いてくれる。

「香世は退院したばかりだからまだ体力が戻って無いのだ。
むしろ良く寝れたのなら良かった。」
正臣は香世を座布団に座らせて安堵した表情になる。

すかさず龍一が香世に走り寄り、
正臣と将棋崩しをして遊んでいた事を嬉しそうに話して聞かせる。

「そう、良かったね。」
嬉しそうな龍一を見て香世もホッとする。

「私なんてお風呂を頂いてしまいましたよ。」
えっ⁉︎と思って姉を見ると浴衣姿の姉がいる。

「今夜は遅くなるから泊まっていって欲しい
と、いってくださったのよ。」
優雅な感じで既に寛いでいる姉に驚く。