冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す


正臣は怪我人の命には変えられないと

「この任務の指揮を執る二階堂だ。
貴様の要求をのもう。
ただし、人質の無事が最優先だ。
怪我人と子供を無事に保護出来なければ
この交渉は決裂すると思え。」
正臣は鋭い口調で伝える。

「分かった。まずは人質を解放し、
その後、要求が成立しない場合は、
こちらからまた怪我人が出ると思え。」

こういう場合の交渉は下手に出過ぎても
強気に出過ぎても上手くいかない。

押したり引いたりして心理を揺さぶりながら、程よく歩み寄るのが大切である。

この中に香世が居ると思うと、
気ばかり焦るが、時間をかけて交渉しなくてはならない事は重々承知だ。

香世に俺の声が届いているだろか…。
普段なら酒井と真壁に任せるのだが、
やはりどこか冷静では無い自分がいると正臣自身も思う。

10分後、

怪我人である支店長と子供2人が解放された。

支店長は少しの猶予もなく意識も朦朧としていた為、直ぐに病院へ運ばれて行った。「二階堂中尉、次に女性の解放を促しましょう。案外簡単にいけるかもしれませんね。」
酒井が余裕な顔をみせる。

「いや、油断大敵だ。
犯人達が逃げる事と資金を調達する事を、
第一条件にするまで粘り強く交渉しろ。」

正臣は部下2人に気を引き締めさせる。

この後、犯人側からの要求は
銀行の今までの横暴な態度を謝罪しろに始まり、記事にして今までの悪業を世間に知らしめろなどの要求が続き、
人質の解放は一向に進まなくなる。

4時間を経過し、犯人側は徐々に疲労が見え始める。