冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

帝央銀行前に到着後、
正臣は中尉としての任務に取り掛かる。

緊急本部を設営、直ぐに包囲を取り囲み周りの緊急避難、立ち入り禁止令をひく。

交渉役は酒井が担ない、
立てこもり班に呼びかけを開始する。

「こちらは帝国軍第一部隊所属、
小隊長の酒井と申す。
立てこもり犯に告ぐ、
ただちに人質を解放し、武器を置き投降を要求する。
貴方達は既に包囲されている。」

正面入り口は店内の椅子でバリケードが築かれ、ガラス張りのロビーにはカーテンが引かれ、店内の様子が見えなくなっている。

「繰り返し告ぐ…。」
三度呼びかけ反応を伺う。

2分ほど待ったところで犯人グループからの応答は無い。

次に交渉に入る。
「貴方達の要求は何ですか?
言いたい事があれば教えて頂きたい。」

少しばかり待ったところで、犯人グループからの反応がある。

店内ロビー近くのガラス張りのカーテンが開き、1人の男が人質と共に姿を現す。

「我々の大義名分は、
この銀行の横暴な態度を世間に知らしめる事にある。
不当に奪った土地や家屋の権利返還と、
不当に払った支払金の返還を求める。」

人質はよく見ると足を怪我しているらしく、
顔色が悪く今にも倒れそうな状態だ。

「それならば、なおさら貴方達は関係の無い人質を解放すべきだ。」

酒井の説得は根気よく続き、
出来るだけ冷静に隙を与えないよう注意深く心理を探る。

酒井の側で、真壁と正臣は指示を出し人質の具合がみるみる悪くなっていく事に不安を覚える。

30分後…

このままでは埒があかないと、
真壁が交代して情を出して話を始める。

「貴方の想いは良く分かる。
土地や家まで奪われて、家族をどう養っていけば良いのか自暴自棄になったのかもしれない。
だけど、ただ一つ考えて頂きたい。
そこにいる怪我人にだって家族はいるんだ。
どうか彼を解放して欲しい。」

「こいつはここの支店長だ。
全ての元凶はこいつにある!」

「しかし、彼の命まで奪う権利は貴方には無い。これ以上罪を重ねないで欲しい。」
真壁の必死な説得に犯人の心が動く。

「では、怪我人と子供だけは解放してやる。」

「そちらに客人は何人いるか教えて欲しい。」
酒井がそう叫ぶ。

「18人だ。」

「一緒に年寄りと女性の解放も願う。」
真壁がそう伝えるが、

「ダメだ、こちらに従え。
お前らの好きにはさせない。
人質と引き換えに大型の車を一台用意しろ。」

逃走を謀る予定だろうか…