冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

「大丈夫です。私が側におりますので。」
真壁がすかさずそう言って上官達を納得させる。

父である大将は少し思案し、分かったと頷く。
「お前に任せる。但し、判断を誤るな。
出来るだけ迅速かつ被害者を少数に抑える事。何よりも犯人確保を優先しろ。」

「はっ!」
正臣と真壁は敬礼し、
直ちに詳細を把握する為任務に取りかかる。

警察からの引き渡し事項を聞き指示を出す。
「真壁、只今より第二、三班を招集。
防御服を着用、完全武装で10分で正門に集合。現場には15分内に向かう。」

「はっ!」
敬礼し、急ぎ指示を部下に伝える。

「私は貴方から離れませんから。
人質に香世様がいらっしゃるとお思いですか?」
真壁がここでやっと本心を聞き出すべく問いかける。

この事件を知って数分の正臣は、
普段、冷静沈着である彼にはあり得ない慌てようだった。

彼が心動かすのは、香世の事以外ないのだ。

正臣は一息吐いてから、

「今朝、香世が姉上の用事で銀行に行くと言っていた。いない事を願うが…。」
心の内を真壁に伝える。

「分かりました。
人質解放を最優先に考えます。
無傷で助け出しましょう。」
真壁は事の一大事を知り正臣と先を急ぐ。

「とりあえず、自分は香世様の安否確認をします。」

正臣が現場出動に向けて班隊長を集め作戦会議を始めた傍ら、
真壁は部下を使い自宅や実家や、
はたまた香世が立ち寄りそうな場所へ連絡し安否確認を優先にした。

結果…やはり銀行に向かったであろう事が
濃厚で頭を抱える。

「真壁、出立するぞ。」

真壁は5分で作戦会議を終えた正臣と合流して車に乗り込む。

真壁がハンドルを取り、助手席に正臣を乗せその後ろに二班、三班の乗る軍用車が続く。

総勢45名の隊員を連れ現場の銀行に急ぐ。