バタバタバタバタ

人が走り来る足音がしたかと思うと

パンパンと乾いた音がどこかで鳴り響く。

何事⁉︎

個室にいた銀行員は騒めき、
香世に机の下に身を隠すように言って足速に出て行った。

何が起きたか分からないながらも、
ドクンドクンと心臓が脈打ち意も知れぬ恐怖が頭をよぎる。

机の下に入り小さくうずくまる。

罵声や悲鳴が飛び交う声が聞こえ
香世は恐怖に慄く。

正臣から桜祭りで買ってもらった巾着袋を
抱きしめ祈る。

正臣様…

香世の頭に浮かぶのは正臣の顔ばかり。

バン!!

と蹴られたドアの音と共に数人の足音

「出て来い!出て来ないと打つぞ!!」

香世がしゃがんだ目線から黒光りする革靴が
2足…

一瞬迷うが、
出るしか無いと覚悟を決めて
震える体を抱きしめ机の下から恐る恐る出る。

「この部屋にはお前しかいないか?」
低くドスのある声に震えながら、
こくんと香世は頷く。

押し入って入って来た2人の男達は、
香世の腕を乱暴に掴み廊下にグイッと押し出す。

「ロビーに連れていけ。」
男の指示でもう1人に腕を引っ張られ
ロビーに連れて行かれる。

既に集まるように身を固めていた客や従業員と共に手を縄で後ろでに縛られて座らされる。

香世は心の中で正臣の名をひたすら唱え
唇を噛み締めて事の成り行きを見守る。