今日は姉に頼まれたお使いで銀行に来ていた。

良くも悪くもご令嬢として育った姉は、
1人では外出しないし、
着物だって1人では着られない。

それで不自由しない生活を送っていたから仕方がないのだけれど…。

お金の価値をよく知らないので、
消費癖がなかなか治らないのが困まりどころではある。

どうしても10円が必要なのだと言う。
香世が理由を聞いても内緒だと言って教えくれなかった。

実家の財産が今どのくらいあるのかも気になるし、父が無駄使いする前に、
新しい預金通帳に分けて置きたいとも思っている。

銀行の窓口に行くと個室に通される。

新しい預金通帳をお願いして、
今の預金通帳を見せてもらう。
香世は預金通帳を見ながら

えっ⁉︎と驚く。

香世が正臣の家に入った月から
定期的に10円ずつ正臣からの入金が入っていた。

何も聞いていなかった…。

何故こんなにも無償の愛をくれるのだろうと
心が震える。

泣きそうになるのを堪えて、
父が使えないように今の通帳にはほんの少しだけ残しておく。

10円だけを姉の為に引き出して大切に懐にしまい席を立つ。

と、その時…