冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

夕飯の宴はいつになく賑やかで
香世も終始にこにこと笑っていた。

俺にこいつほどの話術があれば
香世を楽しませてあげられるのだろうか…。

そう思いながら香世の作った佃煮を肴の当てに酒を飲んでいると、

「香世さんはこの朴念仁のどこが良かったんだい?」
いささかほろ酔い気分の松下が香世に聞く。

本人を前に酷い言い草だなと思って俺は松下をひと睨みする。

「正臣様は朴念仁ではありませんよ。
とてもお優しいですし、
何より心が大きくて側にいてくれるだけで安心します。」

必死になって松下に抗議する香世を目の当たりにして、思わず嬉しさを隠せず口に手を当てる。

「香世、酌はもう良いから部屋に下がっていろ。これ以上ここにいたらコイツに煩く絡まれる。」

ご機嫌な松下を横目に心配になる。

「正臣様は大丈夫ですか?
お茶でもお持ちしましょうか?」
心配そうに俺を見る。

「俺は大丈夫だ。飲んでも酔った事は無い。」

「えー、香世さんはここに居てくれないと
つまらないよ。」

松下が不意に香世の手を掴むから
ムッとして掴んでる手を離させるように技を仕掛ける。

「イテテテッ!おい、親友に何するんだよ。」
痛がる松下を尻目に、
香世を引き寄せ握られた手を撫でて消毒する。

「いいから、向こうに行ってろ。」
髪を撫でて香世を部屋の外に導く。

「自室にいるので、何かあったら呼んで下さいね。」
香世はペコリと頭を下げて下がって行った。