冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

「お待たせしました。」
香世がお茶を持って来てくれた。

お茶を配るその所作でさえ綺麗だと
つい目で追ってしまう。

「香世、少し話がある。座ってくれ。」

松下と向かい合って座っていた場所を
香世に譲り、俺は松下の横に座り直す。

香世は何事かと少し俺の顔を伺い、
そっと向かいの席に座る。

「どのようなお話しでしょうか?」

俺と松下を交互に見て不安そうな顔をする。

「実は、お父上の会社の事なのだが、
来月から松下が社長に就任する手筈が整った。それに伴って少し香世に協力して欲しい事があるのだ。
松下の話しを聞いてくれ。」

香世の顔色を伺いながら慎重に話しかける。

「はい、…どのような事でしょうか?」
松下に目を向け香世は問う。

にこりと松下は無駄に爽やかに香世に笑いかけ話し始める。

「実はね、
君の力を貸して欲しいと思うんだ。
新しい体制で会社を経営するにあたり、
やはり元々働いていた従業員達から少なからず反発がでる。
香世さんのお父上に着いていた役員や部下達は、新しい俺のやり方に不服を覚える者もいるだろう。
その反発を抑える為にも、親族である君の力を借りたいんだ。」

「私の…ですか?」
首を傾げる仕草が可愛い
とつい微笑んでしまう。