冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

俺はどうしよう無い苛立ちについ早足になってしまう。

襖を開けて部屋に入る。

香世はその後ろを小走りで着いて来て襖を閉めて振り返る。
と、同時に詰め寄り抱き締め急速に唇を塞ぐ。

「……っん………⁉︎」

驚き瞬きを繰り返す香世を容赦無く攻め立て、我を忘れてもっと深く繋がりたいと
唇をこじ開け舌を差し入れ、傍若無人に口内を動き回る。

「……あっ……ん…。」
息を乱した香世が、カクンと力が抜けたようにしゃがみ込みそうになのをギュッと抱き止めて、ハッと我に帰る。

「すまない……嫉妬した。」

自分自身さえ制御出来ないほどの嫉妬心に
心が乱れた。

こんな気持ちは初めてだ。

「…ど……どう…したんですか…。」

香世は真っ赤になった頬を抑え
息を整えながら戸惑いの目を俺に向けてくる。

その目がハッと見開き、慌ててハンカチを出して俺の唇を拭き始める。

またやってしまった…

俺は小さくため息を吐きながら気を沈める。

「松下は…生粋の…モテ男だ。」

「そうなんですか?
私は正臣様の方が良いと思いますけど…」

香世が首を傾けながら、
何気なく呟くその言葉に

俺がどれだけ安堵したか当の本人は
分からないだろうな…。

そう思いながら、香世の唇を親指でそっと触れて落としてしまった紅を拭う。