冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

車を降り足早に玄関へ向かう。

玄関を開けると、
そこには松下と前田が香世と談笑していた。

「お帰りなさいませ、正臣様。」
香世が直ぐに俺に気付き、
わざわざ草履を履き、タタキに下りて近付いて来てくれる。

「ただいま。
松下…予定より早く無いか?」
香世に微笑み返し、松下に目をやる。

「思いの外、前の仕事が早く終わってここに直行したんだ。
ついさっき来たばかりだよ。」

松下は爽やかな笑顔を俺に向ける。

「ボス、お帰りなさい。
俺はお止めしたんですよ。
ボスが居ない時に香世ちゃんに会うのは良く無いって。」

お前だって勝手に香世と会ってるだろ…
と悪態を吐きたいのを我慢してひと睨みする。

「ほら、機嫌悪くなっちゃったじゃないですか。松下さんのせいですからねー。」
前田は松下に抗議する。

「香世、着替える。
松下は居間で待っててくれ。」

「了解。お邪魔しまーす。」

靴を脱ぎ、タマキの案内で松下は居間へ向かう。

松下とは学生時代からの腐れ縁で、
昔から勉強が出来て頭のキレるヤツだった。

大人になり、独り立ちすると会社を立ち上げ頭角を現してきた。

香世の父の会社を託すのはコイツしかいないと思うほど、信頼はしている。
実績も申し分無い。

ただ、女癖だけが悪い。

にこやかにしているだけで女子が寄ってくるのだと、本人は言うが決してそうは思わない。