「香世お姉様!」

パタパタと小さな足音が聞こえて来たかと思うと、バンッとドアが開き小さな男児が
香世に走り寄り飛びついてくる。

「龍ちゃん…会いたかった。」
香世もギュッと抱きしめる。

「僕も会いたかった!!」
ぼろぼろと泣き始める龍一を香世は抱き上げ涙をこぼす。

正臣は2人の再会を優しく見守りながら、
もっと早く会わせてあげられなかった事を悔やみ心苦しく思った。

「香世ちゃん…。元気そうで良かった。」

ふんわりとしたドレス姿の姉が部屋に入って来る。

「お姉様…。また2人に会えて嬉しい。」
香世も涙目で姉に微笑みかける。

「二階堂様、妹の事を助けて頂きありがとうございました。」
姉は正臣に深く頭を下げる。

正臣もソファから立ち上がり、
「いえ…頭を上げて下さい。
もっと早く合わせてあげれなかったのかと、
今、反省していたところです。
自分の方こそなかなか連れてくる事が出来ず
申し訳なく思っております。」

香世に抱きついて離れない龍一の頭を撫ぜて
正臣は姉に頭を下げる。

「とんでもありません。
助け出して頂いただけで…充分でございます。」
姉も目頭をハンカチで抑えながら首を横に振る。

さすが姉妹、なんとなく雰囲気が香世に似ているなと思う。

兄妹3人ひとしきり抱き合い慰め合う。

「さぁさぁお嬢様達、二階堂様を差し置いて
失礼になりますよ。早くお席にお座り下さい。」
温かい紅茶を運びながらマサが部屋に入って来る。

香世がハッとして、
「ご、ごめんなさい。」
と、慌てて龍一を抱いたまま正臣の側に
座り直す。

姉も涙を拭きその前の1人掛けソファにゆったりと座る。

「二階堂様、もしかして昨夜は父が失礼な事をしましたか?」
姉が心配そうな顔を正臣に向ける。

「お父様が何が言ってたの?」
香世も心配になって姉に聞く。