香世は久々に入った居間に寂しさを感じる。

母が大事にしていた外国から取り寄せたチェストが無くなっている。

ピアノに始まり段々と無くなっていく家財
が未だ家計が切迫している事を物語っていた。

「香世、どうした?」
急に元気が無くなった香世を正臣は心配する。

香世をソファに座らせながら隣に座り顔を覗き込む。

「ここに置いてあったチェストが無くなっています…多分、質に入れてしまったのだと思います。」

正臣は部屋を見渡し、
他にも幾つか無くなっているのだろうと
察する。

「私を花街に売ったお金はどうなったのでしょうか…姉や弟の為にと思っていたのに…
生活は以前と変わって無いように見えます…。」

「そうか…大事な物は取り戻そう。」

「正臣様!本当にこれ以上はおやめて下さい。
私が…貴方の側に居る事が辛くなります…。」
香世は思わず目を伏せる。

「それは困るな。」
正臣は腕を組み考え始める。