「この生菓子とても美味しいです。
どこのお店のものなんでしょう。」

最後に出された桃色の桜あんの入った生菓子を香世が美味しそうに食べる。

「俺の分も食べるか?」
正臣が自分の皿まで差し出してくる。

「正臣様も食べてみて下さい。」
香世は微笑みそう言って皿を押し戻す。

正臣は、半分にして口に含み残りの半分を
香世の口元に近付けてくる。

咄嗟の事で香世は戸惑いながら口を開けると
正臣は笑いながら生菓子を口に入れてくれた。
他人に食べさせてもらうなんて大人になってからお花見の日以来、2度目だ。
しかもそれがまた正臣なのだから恥ずかしくなってしまう。

香世は真っ赤になって俯き、片手で口を隠しながらもぐもぐと咀嚼する。

「甘さも控えめで旨いな。
明日、これをお土産で持って行こう。」
優しい提案をされて嬉しくなる。

「はい。きっと龍一も喜びます。」

それからしばらく龍一の話が続き、
心穏やかに食事を終える事が出来た。