冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

距離を取りながら
正臣と香世の2人の生活は繰り返され、
何気ない日常となって行く。

正臣は腕時計の事を胸の奥にしまい込み、
出来ればこのまま忘れてしまえばいいとさえ思ってしまっている。

香世を想い人の所へ返さなければと思うのに……。
手離せないでいる。

香世の様子を伺う許可を得た前田が、
正臣がいない間にちょくちょく顔を出すようになり、
今日の香世はこうだったああだったと報告を受ける度、正臣は嫉妬して苛立ってしまう自分に嫌気がさす。

香世の笑顔が見たいと思う。

ずっと幸せでいて欲しい。

願わくは俺の側で、と思う事さえ敵わないのかと…ため息を吐く。

香世は香世で、

毎日忙しくしている正臣を
せめて家にいる時だけでも休ませてあげたいと思うのだが、

だけど何をしたら良いか…
どうしたら良いのかも分からず不甲斐ない自分にため息が出る。

もっとそのお心に近付いて癒してあげたい。

出来ればずっと、正臣様の側にいたい。

この気持ちを言葉にして伝えなければと思うのに…

ふとした瞬間、
一線を引かれているような気がして、
近付く事が出来ないでいる。



そして、極秘任務も最終日を迎える。