思ってもいなかった突然の退院の勧めに、私は動揺した。



「退院、ですか」



ちょっと早すぎるんじゃないかと思った。



検査に異常がなくても、実際こうして記憶障害があるわけだし、もっといろいろ調べることがありそうではないか。



「でもねぇ、記憶障害って、一概には言えないけど、リュウヘイみたいな場合は、家でいつも通り生活していくのが一番効果的なんですって」



とお義母さんは説明した。



きっと医師に、そう言われたのだろう。



でもそんなの納得できない。



「『いつも通り』って、なんですか」



自然と、声が苛立ちの色味を帯びた。



「いつものように、会社に行って仕事して、あー疲れたってお風呂に入って、活字だらけの本を読んで寝なさいってことですか?」



お義母さんにあたっても仕方ないと頭ではわかっていた。



でも止められなかった。



「そんなことできるわけないじゃない!」



「…ミオちゃん」



困った様子のお義母さんを後ろに、頭に血が上ってしまった私は、そのまま走って病室を飛び出してしまった。