ひめゆりの塔の敷地入口では、花が200円で売られていた。



観光バスやタクシーから降りてきた人たちが、そこで花を買って、戦争の犠牲となった少女たちに捧げている。



実際に塔を前にした私は、おばさんを思い出して、なんとなく花を買うのをためらった。



おばさんがひめゆり部隊とどういう関係かわからない。



でも、ここを「そんなところ」と言うほど、ひめゆりに対して深刻な気持ちを抱いているのはよくわかった。



それなのに私は、せっかく沖縄に来たのだからちょっと歴史に触れてみよう、程度の軽い思いではなかったか…―



そんな自分が花を手向けてはいけないような気がして、花屋を素通りした。



塔の前で手を合わせながら、次はきっと花を用意して、きちんとした気持ちで来よう、と思った。



色とりどりの千羽鶴が、眩しかった。