つい最近まで気がつかなかったけれど、考えてみればおかしな話だ。



「うーん、たしかに…」



北岡さんもニコさんも、首を傾げている。



さらに言うと、退院後は私とふたりで暮らすと説明したときに、すんなり受け入れたことも気になっていた。



普通なら当然、両親と暮らしたいと言うはずなのに。



私たちもそれを覚悟していたから、ありったけの知恵を絞って説得するつもりだった。



それなのに、あっさり首を縦に振ったので、拍子抜けしてしまったくらいだ。



「人間は忘れても、生活は覚えてるって感じなんですかね」



と私は言った。



「もしそうだとしたら、なんかくやしいよね」



というニコさんの言葉に、北岡さんも頷く。



たしかに、こんなにも彼を愛しているのに、私たちの思いが感情を持たない「物」に負けてしまったようで、くやしい。



私は下唇を軽く噛んで、うつむいた。