舗装されていない道だったので、滑らないように気をつけながら、森のトンネルを抜ける。



足元に岩場が現れて顔をあげると、もう先には道がなく、ゴツゴツした岩場が続いていた。



そして、その向こうには…―



海。



群青色の、海。



それは、太古の昔からそこにあったのに、突然湧き出てきたように私の目の前に広がった。



この世界の喜びや苦悩や、あらゆる出来事を見守ってきた色なのだろうか。



フェリーに乗る前に寄ったビーチで見たソーダ水とは、まったく違う色だった。



仙人とか長老とか、そういう、酸いも甘いも知り尽くした人の瞳の色ってこんなふうかもしれない、と思った。



柔らかな風を受けて静かに波を立て、光を浴びてキラキラ輝いている。



果てしない自然。



視界に人工物がひとつも入らない場所に来るのは、このときが生まれて初めてだと思う。



息を呑む美しさに、私たちは、ふたたび言葉を失った。