「呼び名といえばさ」



と木下さんが言った。



「あいつ、俺のこと時々『キノピオ』って呼んでたけど、記憶が戻ってもそれだけは思い出さないでもらいたいな」



「ああー言ってたね、キノピオ!」



「急に思い出したように言うんだよな。けっこうツボなんだけど、俺」



「しかも浸透しなくて、あいつしか言わねーし」



あはは、と静かなロビーに笑い声が響いた。



私も一緒に笑いたかったけれど、木下さんが言った「記憶が戻っても」の言葉に反応してしまって、うまく笑えなかった。



すると、そんな私の心中を悟ったのか、隣りの北岡さんが、



「大丈夫?」



と言ってくれた。



その言葉をきっかけに笑い声がやみ、みんなの視線が私に集まる。



雰囲気を暗くしてしまって、申し訳なかった。