Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜

「……どうして、もっと早く折原先生の異変に気付いてあげられなかったの？もっと折原先生の表情を……バイタルサインを見てたら……折原先生は……折原先生は……もしかしたら……」

目の前で命が零れ落ちていく。それは、医師が一番悔しさを感じる出来事だ。俯いたまま後悔の言葉を呟く一花を、桜士は迷うことなく抱き締める。

「四月一日先生、先生は何も悪くありません！僕も、折原先生の腫瘍がもっと早く見つかればと考えたことがあります。でも、僕たちはやれることを全てやりました。折原先生の望んでいた未来を、僕たちが叶えました。……もう、ご自分を責めないでください」

「本田先生……」

自分よりずっと小さなその体を、桜士は強く抱き締める。一花の暗い表情、後悔の言葉は、桜士の心をナイフのように抉った。こんな状況では一花を笑顔にすることはできないだろう。だが、これ以上責めないでほしい。そんな気持ちを込めて、桜士は一花を抱き締める。