Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜

「先生！手術室の準備ができました！」

その言葉に、三人は顔を見合わせる。いよいよ藍の望みを叶える瞬間だ。誰もが真剣な表情を浮かべ、ヨハンが「行こう」と言い、桜士と一花がベッドを押していく。

数時間に渡り、藍の体から臓器が摘出されていった。



摘出手術を終えた後、藍の遺体は骨格標本にするため専門の人に引き継がれ、桜士たちの役目は終わった。

「四月一日先生、ヨハン先生、お疲れ様です」

桜士は二人にコーヒーを手渡す。ヨハンは「ありがと」と小声で言い受け取ったものの、一花は呆然としており目がどこか虚ろになっていた。

「四月一日先生……」

「一花……」

異変に気付いた桜士とヨハンは声をかける。一花は乾いた唇でポツリポツリと言った。

「……数ヶ月前まで、当たり前に生きていたのに……。こんな形でお別れなんて……。信じられない……。現実なのに、受け止めきれない……」

手術をするまで一花の顔はいつも通りだった。医師として冷静になるよう必死に言い聞かせていたのだろう。