Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜

「もうコードゴールドは放送した!これから、折原先生の願いを叶えるぞ!」

ヨハンがそう言った刹那、バタバタと廊下を走る大きな足音が聞こえた。そして勢いよく扉が開き、そこには白髪混じりの髪をした六十代ほどに見える夫婦と、ヒョロリと痩せたメガネをかけた男性が息を切らし、ベッドに寝かされた藍を見て動揺した顔を見せている。

「藍!!」

夫婦、そして男性がベッドに駆け寄る。恐らく彼女の両親と夫だろう。ヨハンは複雑そうな顔で彼らを見つめ、一花はどこか怒りを含んだような顔を、桜士は覚悟を決めた顔をしていた。

「藍さんのご家族さんですか?」

桜士が訊ねると、「そうだが?」と男性がメガネをクイと上げた。桜士は、藍が前に病院を訪れた時に書いてくれた紙を三人に見せる。藍があの日言った言葉を思い出しながらーーー。

『私が脳死したら、私の臓器全てを臓器提供したいの。そして、私はお墓には入りたくない。骨格標本にして医大に置いてほしい。それが、私、折原藍が生きた証になるから……』