紅子のお腹に消毒がかけられ、モニカが麻酔をかけていく。バスの中は、バスジャックが起きた時以上にどこか緊張に包まれていた。

「メス」

モニカに言われ、桜士はメスを手渡す。紅子のお腹にメスが入れられ、大きく膨らんだ子宮にも迷うことなくメスが入れられる。

「胎児の頭の位置、確認しますね」

桜士がそう言い、子宮の中に手を入れる。その間に、一花は赤ちゃんにも使用できるAEDの準備と保育器の準備をしていた。

「頭の位置、確認できました」

桜士がそう言うと、モニカが「よし、取り出すぞ」と言い、赤ちゃんをゆっくりと取り出していく。

妊娠七ヶ月で体の外へと出された赤ちゃんは、十ヶ月で産まれた赤ちゃんより当然ながら小さい。そしてーーー。

「呼吸できていません!」

桜士がそう言い、小さな体に胸骨圧迫を行っていく。一花がAEDを取り付け、モニカがアドレナリンを注射器に注入した。

「AED押します!離れて!」