彼女、と聞いてキョンシーは中学校で出会った女性を思い出す。eagleのメンバーというだけあり、戦闘能力に優れていた。末端のメンバーたちは次々と気絶させられていったことを、今でも鮮明に覚えている。

「そうか、彼女は……」

キョンシーも気が付けば、無意識に呟いていた。幹部二人は今、同時に同じ女性のことを考えている。そこにボスの声が降り掛かった。

「どうすれば組織のためになるか、わかるだろ?」

「はい、ボスーーールシファー」

この組織のトップに君臨する男のコードネームを言い、二人は頭を下げる。それを見て、ルシファーは満足げに笑っていた。



公安警察と医師という二つの顔を持った人物がいる。その名は九条桜士(くじょうおうし)。仮の名前は本田凌(ほんだりょう)と言う。

そんな彼は今、何故かカラオケに着ている。カラオケなど行く時間もなく、一緒に行く人もおらず、初めてである。

(ここがカラオケ……)