「痛みを感じなきゃ母親になれないなんて、誰が決めたんですか?痛みを一ミリも感じない父親は、父親に一生なれないんですか?さっきから、無痛分娩や帝王切開が甘えだと言っていますけど、どちらも痛いんですよ!!」

無痛分娩とは、背骨の間から硬膜外腔という空間にカテーテルを挿入し、麻酔を注入して痛みを分娩時の和らげる方法である。欧米ではこの出産方法は一般的だが、日本は麻酔科医の不足と痛みを感じて産むべきという考えから、無痛分娩率は諸外国に比べて低い。

「無痛分娩は確かに麻酔を入れる。だが、麻酔を入れることができるのは子宮口がある程度開いてからだ。その間は通常の出産と何ら変わらない痛みを感じることになるし、そもそも体質によっては麻酔が効かない人もいる。……無痛分娩について何も調べてなかったのか?」

モニカに睨まれ、太一たちは一瞬たじろいだ。だが、すぐに「でも」と反論しようとする。それをすかさずモニカが遮って言う。