そうかと思えばパッと目隠しを外されて、目を開けばそこには画面いっぱいの廉くんがいた。

滅多に笑わない廉くんがクスッと笑顔を見せている。



「……っ」



それにドキドキしない人なんていない。

いつも不機嫌そんな顔ばかりしているのに、そんな優しそうな笑顔は反則だ。

廉くんってこんな顔もできたんだって、ドキドキしてる。



「愛華の全部、俺にちょうだい?」

「……っ!?」



優しい手が頭に触れて、廉くんは私のおでこにキスをした。

声にならない声が漏れそうになる。

反則だよ、廉くん。

こんな見たことのない廉くんを見せられて、ドキドキしないはずがない。

撮影クルーの女性陣からもキャッと声が上がったくらいだ。



「カットー!いいね、廉くん!今の最っ高だったよ」



監督からもお褒めの言葉が出てくる。



「ありがとうございます」



カットがかかると、いつも通りのクールな廉くんに戻っていた。

ずっとさっきの廉くんの方が人気出そうなのにな。

今回のPVが出たら、廉くん人気も増えてしまいそう。

そう思うと、なぜか胸がチクリと痛んだ。



「お疲れ、愛華」

「……っ!」



頭の上にポンと手を乗せられる。

一瞬だったけれど、確かにそれは廉くんの手と言葉だった。

これで好きにならない方がどうかしている。

最後の最後までドキドキが止まらなかった。