俺が外遊で学院を公欠している間にクロエとの間が近付いたらどうしようと、そればかりが気になり、外交行事が終了した途端に帰りたくなったのだ。


もし、アドリアンがクロエを欲したら。
彼女の身分と釣り合うように王弟の地位を意識するかもしれない。
そうなると俺は、恋と王位の両方で彼と競わなくてはならない。


王太子の地位なんて盤若ではないのは、理解している。
俺は単に国王陛下の第1子だから、この位置にいるわけで、俺がそれに相応しくないと判断されたなら、すぐに弟と入れ替わってしまう。
 
現に国王陛下も元々は第2王子だった。
英明な国王陛下がアドリアンを王族に加えようとしているのは、彼が優秀だからだ。
この血筋を長く保ちたいなら、より優秀な人間をというのが、この国の王家なのだ。