アドリアンは俺の叔父だ。
先代国王の公的には認めてられていない女性が生んだ庶子で、現国王陛下の異母弟。
王位継承権は第4位。
本当はそういった庶子には継承権なんか無いのだが、前国王は亡くなる前に息子である国王陛下に病床で頼んだのだ。

『アドリアンが望めば、王族として遇してやって欲しい』


国王陛下は国外に人をやり、現地でのアドリアンの行状を調べた後に、それを受け入れた。
前国王は王太后陛下とは完全な政略婚だったが、悋気の強い女性で、祖父が大切に大切に誰にも知られることなく育てた愛の結晶がアドリアンだった。

母親は産後の肥立ちが悪く儚くなってしまったが愛息子は彼女の兄夫婦の実子だと届け出られた。
他国にも店舗を抱える大商会の跡取りとして、国外で育てられていたが、一昨年王太后が亡くなって、母国に帰国した。


叔父と甥の俺達は同い年で。
素直に友人にはなれない顔見知り程度の関係だった。
アドリアンは俺が甥であると知っていることに気付いていない。