ブリジット・ビグローの髪はピンク味の強いブロンドで、瞳は春の晴れた空の、淡いブルー。
お化粧なんかしなくても。
薔薇色の頬に、ぷるるんとした艶やかな唇。

あたしは登校前、ドレッサーの前で首を上下左右に振り、何度もチェックした。
真新しい制服のリボンの形をもう一度整える。
ふふっ、やっぱりあたしは可愛い……完璧ねっ。

編入初日の朝食を早めに切り上げて、かれこれ
30分近く鏡の前に居る。
今日から新しい世界が、あたしを待っている。
そう思うと、食事などゆっくり取る気分になれなかったの。

4日前から何度も、鏡に自分の顔を映した。
何故なら、信じられなかったから。

自分が……
『この気持ち全部をあなたに~底辺令嬢ですが、全方向から愛されています!』
のヒロイン、ブリジットになっているなんて!


それは大好きなゲームだった。
大好きな声優達が攻略対象者達を演じている逆ハー乙女ゲームだった。

何故か、前世の自分の名前は思い出せない。
わかっているのは、このゲームに入れ込んでいたことだけ。
あたしがどうして、乙女ゲームの世界に入ってしまったのかも知らない。
前世で死んだのか、それとも意識だけこちらに来たのか。