翌年の高等部の授業選択も当然、リシャール殿下に合わせるのだが、外国語は3ヶ国語有る内、
殿下と私の希望する語学は違っていた。
勿論、そんな己の希望は口にはしないので、殿下は御存じなかった。


中等部の3年生になると、殿下は勝手なことを
始めた。
王命で結ばれた婚約者がいらっしゃったのに。
1学年下のミレーユ・バルモン伯爵令嬢と恋仲になられてしまった。

そして、ある日私にこう言った。


「今日だけは午後から俺に付くな」と。


その日の午後、リシャール殿下とバルモン伯爵令嬢との間に何があったかは知らない。
側近として、いつも側に付いていたフランソワ侯爵令息もこの日は付くなと言われて、苦々しい顔をしていた。

取りあえず、このことを王妃陛下にご報告するべきかふたりで相談した。

学生のフランソワ様はともかく、私は王家に雇われている身だ。
主はリシャール殿下ではない。