甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 もう今更言ったって、誰も聞いてはくれないだろうしなぁ……。

 はぁ、こうなるんだったら乾と徹底的にかかわらないように頑張るしかない。

 もちろん、厳しいだろうと言うのは分かってるけど、さぁ……。

「これからよろしくね、有栖沢さん。」

 語尾に音符マークがつきそうなくらいの笑顔でそう言った、乾望遙。

 私は今にも不満をぶつけたかったけど、もうどうしようもない。

「……私はよろしくする気ないから。」

「おー、怖いね。」

 ぷいっと視線を逸らし、つっけんどんに言い放つ。

 絶対、怖いとか思ってないやつじゃん……。

 乾に怖いものなんてあるんだろうか、なんてさえ考える。

「はぁ……。」

 がやがやとしている教室内、私は一人大きなため息を吐いていた。



 高校生になっても、子供な人は子供らしく。

 昼休憩になるや否や、男子共は遊びに教室を飛び出した。

「杏ちゃんがまさか副委員長になっちゃうなんてね。でも私は杏ちゃんだったら安心できるかな?」

「空音……他人事だと思ってっ……。」