甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

「分かった。だったら放課後、教室に残ってて。その時に言うから。」

「……うん。」

 逃げられた? はぐらかされた?

 ……ううん、多分違う。

 乾の目は、本気で真剣だった。遊びじゃない。

 だからちゃんと、言ってくれるんだと思う。

 そうだと思いたい。

「じゃ有栖沢さんは先に教室戻ってて。倉庫の鍵閉めてから俺は行くから。」

「……分かった。それじゃ任せた。」

「任せられました。」

 ふふっと面白げに笑う乾は、いつもの余裕がある笑みじゃなくて。

 年相応の、男子高校生のような微笑みだった。



 ――キーンコーンカーンコーン

「それじゃみんな、気を付けて帰れよー。部活行くやつも気を付けろよー。」

 先生の声を合図にして、一斉に帰り支度や部活準備をするクラスメイト。

 私は……部活には入っていないから、本来なら帰るだけ。

 クラスメイトがいなくなってから、乾が声をかけてきた。

 どちらも椅子に座ったまま、言葉を切り出す乾。

「言うって約束だったの、守ってくれたんだ。てっきり帰るものかと思ってたけど。」