甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

「……それじゃ俺、行ってくるね。」

 乾はそう言って、立ち上がりコート内へと入っていった。

 残された私の心の中には、疑問が渦巻く。

 乾が余計に、分からなくなった。

 見てほしいって意味が分からない。

 何で紳士になっているのかも、予想がつかない。

 ……乾は、何がしたいの?

 何も分からない私は、うーんと悩む他なかった。



 ……ふぅ、流石に疲れた。

 ぐーっと腕を上に伸ばして、大きく息を吐く。

「杏ちゃんさっきの投げ方、一体どこで習得してきたの? 凄く速かったよね?」

「あー……それは何か知らないけど、勝手に覚えてたんだよねー……。」

「勝手であんなに速いだなんて……杏ちゃん凄いっ。」

「あ、あはは……。」

 二試合が無事に終わり、私と同様もう出場しない空音が私を囃し立ててくる。

 勝手というか、何というか……ね。

 ボールを投げる時はつい、日頃のストレスなんかを込めちゃうからなぁ……。

 だからきっと、そのせいだと思う。