甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 いや、でもこんな簡単に紳士になれるものなのか……。

 人って何か大きな物事がないと、そう簡単に性格は変えられないはずだ。

 演技か、はたまた何か大きな事が乾にあったのか。

「乾。」

「ん? どうしたの?」

 ほら、何かチャラさがない。

 見た目こそはチャラいけど、今まで見たいなウザさがないって言うか……。

 言葉には表しづらいけど、そんな感じがした。

「いや……何か乾が変わった気がしてさ。前まであんなチャラかったのに、今は紳士っぽいって言うかさ。」

 ふっと笑いながら、思っていた事をそのまま口に出す。

 そこがちょっとキモイかもしれない、って言おうとした途端。

「有栖沢さんはさ、紳士な人好き?」

「そ、そりゃあ紳士に越した事はないとは思うけど……」

「それじゃあ有栖沢さんは、俺がもっと紳士になれば見てくれる?」

 ……っ、え?

 もっと、紳士に……?

 それに、見てくれるって……?

「ねぇ、それってどういう――」

「それじゃあ次の試合すっから、さっさとコート内入れー。」