甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 私は乗り気なほうではないから、体育館の端っこで見てるだけだけど。

 確か真ん中くらいの試合が、私の出るやつだったっけ……また後で表見ておかなきゃ。

 ぽつりとそう思い、体育座りをしてぼんやりする。

 ボールが剛速球で飛んでこなきゃいいけど。

 なんて心配をしながらも、始まった試合をぼーっと眺める。

「有栖沢さん、隣良い?」

 試合が始まって少しした後、私の傍に乾がやって来た。

 そういや乾も私と一緒のグループだったはず……。試合数は格段に乾のほうが多いけど。

 私は一瞬躊躇ったけど、別に座るくらいなら大丈夫だろうという結論に至った。

 ここには他クラスの生徒も居るし、流石に公衆の面前でこいつも変な事しないでしょ。

 したらそれこそ、モラルの欠如だからね……。

「勝手にすれば。」

 短く小さな声でそう言うと、乾はこの前と同様に「ありがとう。」と爽やかに言ってゆっくり座った。

 私と少し距離を開けて、座ってくれる乾。

 そこに不覚にも、こういうところは紳士だ……と思ってしまった。