甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 やっぱり女好きだから? 遊び相手が欲しかったから?

 ……逆に、他の理由なんて考えたくないけど。

「有栖沢さーん。」

「話しかけてこないで。」

 乾と話してると、思い出しちゃうから。

 ファーストキスは絶対、好きになった人としかしないって決めてたのに……いとも簡単に、この男に奪われた。

 その事実がある限り、私はこの男を嫌い続ける。

 子供みたいって思われても、この際はどうでもいい。こう見えても私は、結構願望が強いのだ。

 だから話しかけまいと、ずっと無視をする。

 ……だけど、次の瞬間に耳を疑うような言葉が飛んできた。

「有栖沢さん、この前は……ごめんね。」

 ……あやま、った……?

 乾から出てくるような言葉じゃなくて、気を取られて乾のほうを向く。

 真剣な瞳と合ってしまい、私は慌てて逸らした。

 ……何。何でそんな、悲しそうな目をしてたのだろう。

 初めて見たような、まっすぐな視線。

「……別に。」

 あんたのせい!なんて、言えなかった。

 言おうとは思ったけど、ここまで申し訳なさそうにされたら言えなくなってしまう。