『さいっていっ……!』

 あの日から、私は乾を徹底的に避けるようにした。

 ファーストキス、だったのに。

 そればかりが頭を支配して、悔しくなって泣きたくなる。

 あんな奴にキスされた。それだけで苛立って仕方ない。

 でも隣の席だから、接触してしまう事は避けられなくて。

「それじゃあ隣同士で交流会でする案を出してくれ。いろんなのを期待してるぞ!」

 相も変わらず先生は、こういうイベント事にノリノリだ。

 というかこの学校自体がイベント好きで、年間凄い数のイベントがある。

 今回する二年の交流会も、主任の先生がほとんど企画してくれるらしい。

 それを踏まえて、いろんな案を出せ……と。

「ねぇ有栖沢さん。」

 ……そして隣の男は、まるで何もなかったかのように話しかけてくる。

 クラスメイトはみんな、話に夢中で誰も私たちの不仲さには気付かないだろう。

 まぁ、私が一方的に嫌ってるだけだろうけど……。

 乾も乾だ。どうしてこんな愛想の欠片もないような女に、キスをしてきたのだろう。