甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

「別に私は文句を言いに来たわけじゃないんだけどね、もし杏ちゃんを好きなんだったらさ……。」

 そこで言葉を切り、今まで見た事のないような真剣な眼差しを向けてきた咲来さん。

 ……そしてゆっくりと、まっすぐな言葉を投げてきた。

「真剣に杏ちゃんに向き合って。自分の赴くままにするんじゃなくて、思いやりを意識して。」

「……わか、ってる。」

「分かってるのならいいよ。これ以上は言う気ないから。」

 ふふっと笑い、咲来さんは倉庫を出て行った。

 ……分かってる、分かってるんだ。

 自分が最低な事した自覚はこれでもかというほどある。なかなか治らないのが難点だけど。

 でもやっぱりそうだよな。有栖沢さんに好きになってもらえるようになるには、“チャラ男”や“プレイボーイ”というレッテルをなくさないといけない。

 ……めっちゃ一途なの、気付かれてないもんな。

 ……それでも、信用してもらえるのなら。

 有栖沢さんに信用してもらえるなら、頑張るしかない。真っ当になるしかない。

 それくらい、やってやる。好きな子に認められるなら、何だって。

 俺は一人の倉庫で、ぐっと拳を作った。