甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 有栖沢杏。一年の女の子の中で一番運動神経が良いらしく、その整った容姿から男人気がある子。

 まぁ、ノリが良いから女の子からも慕われてるらしいけど。

『……そういやよく見たら、顔赤いね。ちょっと失礼。』

『っ……!?』

『? 何かもっと赤くなってない?』

 ぴとっ……と冷たい小さな手が俺の額に当たり、今までに感じた事のない感情に襲われる。

 何だ、これ……っ。俺、何でこんなドキドキして……っ。

『せっかく保健室来たんだったら寝ときなさい。これ、体温計。後で冷却シートと経口補水液持ってく。』

『あ、ありがと……。』

 脈拍が激しくなっていく俺とは裏腹に、有栖沢さんは淡々とそう言う。

 妙に慣れているような手つきに、俺は不思議に思った。

 ……だけど案外体はきつかったのか、はぁ……と荒い呼吸を繰り返しながら大人しくベッドに倒れこんだ。

 その数分後、両手にいろんなものを持ってきてくれた有栖沢さんが視界に映る。

『これ貼っといたら何とかなるから、一応貼っといて。それと水分は定期的に取って、しっかり休む事。私はもう出てくから、ゆっくりしといてね。途中で死んでも困るし。』