甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 母さんは親父のこと、実際はどう思ってるんだろうか。

 きっと母さんの様子から、親父への未練はある。

 ……だからこそ、そんな無神経な事聞けなかった。

 母さんは何があっても、俺に暴力を振ってこなかった。

 それは今もそうで、俺の前だけは優しい。普通の母だ。

『母さんも、かよ……っ。』

 俺が真実に気付いてからは、そう思えなくなったけど。

 母さんも結局親父と一緒だった。男遊びを平気でする、軽い女だった。

 家に毎日違う男を連れてきて、部屋に閉じこもる。

 その事に気付いてからは母さんも知っているように俺に冷たくなり、会話さえもままならなかった。

 また、戻ってしまった。愛されない生活に。

 数日前までは、自分はそんなだらしない人間にはなりたくない、なってたまるか。

 そう思っていたけど、もう何もかもがどうでもよくなった。

 俺も愛されたい。それだけだった。

『ねぇ乾君、あたしと楽しい事しない?』

 もう壊れかけていた心に追い打ちをかけたのは、そんな誘い。