甘くて優しい青春恋物語 ~一途な一目惚れは交わしのあとで淡い恋に~

 紳士なんかじゃなかったっ……!

「馬鹿乾っ……!」

 だからチャラ男は嫌なんだ。好きでもない女にこう簡単にキスするんだから。

 しかも……ファーストキス、だったのに……っ。

 画鋲を渡してもらうのも忘れ、勢いよく倉庫から出る。

 行く当てなんてない。もうあんな奴知らないっ……!

 一瞬でも紳士だと思った私は、物凄く馬鹿だ。

 ……でも、何であんなに真剣そうな顔だったんだろうか。

 今まで見た事ないような、どこか儚げな……。

「あれ? 杏ちゃんじゃん。お片付け終わった――」

「空音ー……!」

「ふぇ? 杏ちゃん、どうしたのっ?」

「うぅっ、どうしたのじゃないっ……!」

 向こうから歩いてきた空音に凄い勢いで抱き着いて、ぽかぽか殴る。

 空音のせいでもあるんだっ……! 空音があんな、乾を庇うような事を言ってちょっとは信用しちゃったからっ……。

「……と、とりあえずあっち行こうか? お話はちゃんと聞くから。」

「当たり前っ!」

 正直、イライラが抑えられない。