「あの、答えづらいなら大丈夫です。ちょっと気になっただけなので……」
「……」
考えてみれば、私も話したことがない葛籠くんの名前を知っているわけだし。
葛籠くんと私を一緒にするのは違う気がするけど、でも、そういうことだよね。
うん、自己紹介をする必要がなくなっただけだよ。
1人で納得して、葛籠くんに指定された扉の前のベンチに近寄ると、葛籠くんもロッカーの向こうに戻った。
あっ、と思い出して、紗奈へ事情説明のメッセージを送っておく。
すぐに[ボールの大きさで違い分かるでしょ]と返事がきたのに苦笑いしていると、足音がして、葛籠くんがこっちに来た。
「名前、知ってた理由、だけど……。……俺、西園サンに一目惚れ、してたんだ」
「……へっ?」
思わず間抜けな声が出たのも仕方ないと思う。