―――――――…青い、光に包まれ。

私が降り立ったのは、目がちかちかしそうなカラフルな部屋だった。

…ここは?

気がつくと私は、ハンガーにかけられた、たくさんの…ドレスに囲まれた部屋にいた。

カラフルだと思ったものは、どうやらこのドレスの数々だった模様。

見たところ…衣装部屋、のようですね。

ここは、『不思議の国のアリス』が作り出した世界。

くそったれなハンプティ・ダンプティに、『不思議の国のアリス』について説明され。

アリスのお茶会とやらに参加する為、私達はそれぞれ、お茶会の招待状を探さなければならないらしい。

…非常に面倒ですね。

全く、私はこのようなことをしている暇はないというのに。

魔導教育委員会に提出する書類が、まだ書きかけのまま職員室の机の上に放置されているし。

来週授業で使う資料も、まだ完成させていない。

下らないお茶会などさっさと済ませて、学院に戻りたいですね。

アリス云々などより、明日の授業のことの方が、私にとっては遥かに大事です。

…それで、この部屋は一体何なのか。

私が引いたトランプのカードは、ハートのクイーンだった。

つまりここは、さしづめ「ハートの女王の世界」ということなのでしょう。

…非情にどうでも良いですね。

…そのとき。

衣装部屋の窓から、外の景色が見えた。

思わず、私は窓辺に歩み寄った。

…窓から見える、この世界の外の景色。

「…気色悪いですね」

さすがは不思議の国、といったところでしょうか。

青いはずの空は白く。

白い雲の代わりに、金色の懐中時計が宙に浮き。

おまけにその時計の針は、過去を刻むかのように逆回転していた。

…ふん。

こんなこけおどしで、私がびびるとでも思ったのでしょうか。

だとしたら、片腹痛いですね。

…ともあれ。

気色悪い外の景色を、悠長に眺めている暇はない。

制限時間までに、アリスのお茶会の招待状…とやらを、見つけなければならないんでしたね。

じゃあ、さっさと探すとしましょう。

まずは、この雑多な衣装部屋から。

あまりにたくさんの衣服が散乱していて、思わず全部ゴミ袋に叩き込みたくなるけれど。

残念ながら、掃除をしている暇はない。

一枚一枚ドレスを退かして、早速招待状を探し始めた…。



…そのとき。

「…ケケケッ」

「…」

非常に不愉快な笑い声が聞こえて、私は振り返った。