…眩しい、青い光が開けた先に。

待ち受けていたのは、小さな小部屋だった。

まず真っ先に確認したのは、勿論。

「シルナ…」

「羽久…」

お互い、顔を見合わせた。

…良かった。本当に、同じ数字を引き当てた者同士は、同じ世界に送られるんだな。

俺は今回、シルナと共にアリスの招待状を探すことになる訳だ。

全員一緒だった『シンデレラ』のときほどの安心感はないが、しかし一人でないことにホッとした。

…さて。改めて。

「これから、どうすれば良いんだ…?」

「書いてあることに従え、って言ってたけど…」

書いてあるって、何処に何が書いて、

…あ。

今いる小部屋の小さなテーブルの上に。

「drink me」と書かれたラベルの貼られた小瓶が、二本置いてるのを見つけた。

小瓶の中には、およそ美味しそうとは思えない、濃い青い液体が並々と満たされていた。

…。

…怪しさ満点の飲み物を発見した。

「シルナ、何だあれは」

「…怪しいね」

「drink me」と言えば…『不思議の国のアリス』では、お馴染みとも言える文句だが。

実際目の前に出されると、怪しさしか感じない。
 
アリスは、よくこんな怪しい飲み物を飲んだもんだよ。

拾った(?)食べ物や飲み物を食べちゃ駄目だって、小さい頃教わらなかったか?

そして、青い小瓶を前にした俺とシルナは。

「…どうするよ、これ。…飲むか?」

「う、うーん…。どうしよう…」

シルナでさえ躊躇っている。

これがチョコレート飲料だったら、迷わず飲んでたと思うが。

さすがに、この得体の知れない青い液体は、いくらシルナでも気が引けるらしい。

「いかにも怪しげだな…」

「でも…言ってたよね、さっき…ハンプティ・ダンプティが」

あ?

「書いてあることに従えって…これのことだよね?」

…あぁ、成程。

要するに、「drink me」の指示に従えと。

…飲めってことか。これを。

俺達に選択権はないのか。

「飲まずに済まされないだろうか…」

「ど、どうだろう…。ハンプティ・ダンプティがわざわざ、指示に従うよう忠告してきたってことは…恐らく、従わないと招待状を手に入れることは出来ないんじゃ…」

「…そうか…お前もそう思うか…」

俺も、そうなんじゃないかと思ってたところだよ。

あまりにも怪し過ぎて、あまりにも飲みたくないから、必死に抵抗してたけども。

…やっぱり飲まないと駄目だよなぁ。

「…仕方ない。飲むか…」

俺は自分も小瓶を手にし、シルナにももう一本渡した。

…改めて見ると、身体に悪そうな色してるな。

これ、本当に飲んで大丈夫なのか?

いかにも怪しいお薬って感じ。腹壊しそう。

…ブルーハワイジュースだと思おう。

俺は意を決して、小瓶のコルクを取った。