私が好きな男の子の、その友達は、冴えない系男子ですが実は私の推し俳優で、なぜか「恋愛ドラマの練習がしたいから相手役をしてほしい」と頼まれ同居することになりました!?【シナリオ】


〇聖(ひじり)のマンション


奥外 星奈 おくがい せな(今、なんで私はこんな事になっているんだろう)


二人きりの部屋で、ドラマの台本を持った聖が星奈に近づく。


伊利屋 聖 いりや ひじり「じゃあ、まずはドラマ撮影の練習からお願いしてもいいかな?」
星奈「え、えぇ!?」


思わず後ずさる星奈。聖は、星奈が戸惑っていると勘付き、笑顔で更に近づく。


聖「大丈夫だよ。奥外さんは立ってるだけでいいから」
星奈「ほ、本当に立っておくだけ?」
聖「そうそう」
星奈「なら……」


星奈は聖から台本を受け取る。「ここだから」と聖に指をさされたのは、なんとキスシーンの場面。


星奈「こ、ここここ、この場面はいただけない!」
聖「むしろ俺がいただく方かな?」
星奈「そうじゃなくて!」


星奈(え、フリ?フリだよね?キスするフリだよね?)


星奈「(キスするフリだって)分かってるよね?」
聖「もちろん」


聖(舌まで入れないように気を付けないと)


聖は星奈に近づく。真っ赤になって震えている星奈を見て、思わず頭を撫でる。


聖「緊張しないで」
星奈「(無理だから!)」
聖「俺に全部を任せて。ね?」
星奈「~っ!」


星奈(あ~もう。本当、なんで。どうして、こんな事に。
そう、全てはあの瞬間から始まったんだ――)


〇(回想)今日の学校。廊下


星奈(私、奥外星奈。高校一年生。趣味は推しを推すこと。そして、その推しは……俳優さん)


星奈「あ、今日推しが出るドラマするじゃ~ん!やったぁ絶対見なきゃ!」


星奈(たった一人の俳優さんを推すに至った理由。それは、高校受験の日のこと。私と推しは、まさに運命的な出会いをしたの――)


星奈「さかのぼる事、半年前。あれは、」



すると、星奈の前方不注意で、聖と廊下でぶつかる。


ドンッ


星奈「あ、ごめん!」


カシャンと不吉な音がする。


星奈「わ、大丈夫!?本当にごめんなさい!」


星奈は慌てて、落ちた物を見る。それは流れ星がモチーフのストラップがついているスマホ。


星奈(わ、可愛いストラップ……じゃなくて!どうしよう、スマホは無事!?)


聖「大丈夫ですよ」
星奈「あれ?今の声って……」


星奈が見上げると、そこにいたのは聖。自分がぶつかったのは聖だったと、星奈は気づく。


星奈(伊利屋聖くん!静かで真面目でガリ勉でメガネ。いわゆる、冴えない系男子。あまり話したことはないんだけど、伊利屋くんの事は知ってる。
なぜかっていうと……)


星奈の想い人である、俵本 慧(ひょうもと けい)が二人に近寄ってくる。


慧「おーい聖?どうした?」
聖「あぁ、慧」
星奈「け、慧くん!」


星奈(伊利屋くんは、私の好きな人「慧」の友達だから!慧を観察していると、よく伊利屋くんも視界に映るんだよね~)


慧「どうした?二人して突っ立って」
聖「別に。なんでもない」
星奈「いや、何でもなくないから!」


星奈は聖のスマホを拾う。画面を見ると、液晶がバキバキに割れているのを見つけ、顔がサーッと青くなる。


星奈「わー!伊利屋くん!ごめん!スマホをダメにしちゃった!」
慧「おー見事に割れてるな」
聖「大丈夫ですよ」
星奈「大丈夫じゃないから!」


すると慧が担任に呼ばれて、その場から去る。残った星奈と聖で、今後の事を話し合う。


星奈「弁償させて、お願い!」
聖「いや、弁償なんて程のことじゃ、」
星奈「ほどの事だよ!」


鬼気迫った表情をする星奈に、聖は困った顔をする。だけど次の瞬間、ニヤリと笑みを浮かべて「では」と一つの提案をもちかける。


聖「俺のスマホが直るまで、俺のスマホの代わりをしてくれませんか?」
星奈「ん?」
聖「連絡がとれないと困る事がありまして」
星奈(困るのは良くない!!)


話をろくに聞かずに、星奈は「OK」と返事をする。そして、あれよあれよと言う間に、聖の家にやって来た。


〇聖のマンション


ガチャ


星奈「わーすごく片付いてる。っていうか、物が全然ないね」
聖「俺しか住んでいませんからね」
星奈「一人暮らし?」
聖「ちょっと訳があって」


困ったように笑う聖に、星奈は深く聞く事が出来なかった。しかし、その時。リビングの壁に貼ってあるカレンダーを見つける。


星奈「わー予定がびっちり書いてあるね!すごーい」
聖「……」


何気なく目を通していると「ドラマ撮影」やら「CM撮影」や「ラジオ収録」、「雑誌インタビュー」等の文字が書かれている。


星奈「あの、伊利屋くん……これって?」


疑問に思った星奈がカレンダーから目を離し、聖の方へ向く。すると、そこにはドラマの台本を持った聖が立っていた。


星奈「”聖なる夜の秘密の賭け事”……って、これ今ドラマで話題の?」
聖「はい。主人公をしています」
星奈「”主人公をしています”?」


星奈(え、誰が?何の?)


すると、今まで冴えないガリ勉スタイルだった聖が、メガネをとって、髪をかき崩す。すると、次に現れたのは絶世のイケメンだった。


聖「実は俺……俳優やってるんです」
星奈「ん?」
聖「名前は、天野 星(あまの せい)です」
星奈「あまの、せい……」


星奈(ってドラマの主人公をしている俳優の名前ー!?そして私の推し!!!!)


星奈、一気に顔が赤くなる。実は星奈は、俳優である天野星の熱狂的ファンだった。


星奈「わ、私の推しが目の前に……!?そんな幸運あっていいんですか!?」
聖「お、奥外さん?」
星奈「あ、す……すみません。はしゃいじゃって!!」


両手で顔を隠す星奈。その指の隙間から、真っ赤な顔が少しだけ覗いている。


星奈「昔から、ファンなんです……。天野星さんの……っ。あの日から、ずっと……!」
聖「!」
星奈「あ、じゃなくて、その……すみません。きっと忘れられてると思うのですが……。私、あなたと一度だけ会った事があるんです……。だから、つい……。はしゃいじゃって、ごめんなさい!」
聖「えっと……あ」
星奈「え?」
聖「涙……」


星奈の頬に、涙が伝っているのに気づいた聖。「奥外さん」と指で涙を拭いながら、頬をスリッとなぞった。


星奈「ひゃう!」
聖「! そんな可愛い声、出さないでください」
星奈「や、可愛くはないんですけど……あの、すみません……っ」


また真っ赤になった星奈を見て、顔がほころぶ聖。「可愛いな」と無意識に言葉が出てしまう。


星奈「ん?今、何か、」
聖「奥外さん、こうしませんか?」


すると、いきなり聖が提案する。それは、交換条件のようなもの。


聖「俺のスマホが直る間、奥外さんが俺のスマホの代わりをしてください――と言いましたよね?」
星奈「うん」
聖「俺、スマホをフル活用してるんですよね。演技の確認をするために動画撮影したり、セリフの抑揚を確認するためにボイスレコーダー使ったり。言う間でもありませんが電話やメールは、なくてはならないツールです」

星奈はコクコクと必死にうなずく。

聖「代替機を借りてもいいのですが、万が一情報漏洩した時が困りますし。それに比べて、同じクラスの奥外さんなら、きっと俺の秘密を守ってくれますし。演技の練習相手にもなってくれますし」
星奈「ん?練習相手??」


星奈(有名俳優である天野星さんのスマホの代わり、それに演技の練習相手なんて、私が出来るわけないよ!)


絶対に断ろうと思っていた星奈。だけど……


聖「俺のスマホ……もう電源つかないですね。色々なデータが入っていたのに。もう戻らないんでしょうね……」
星奈(うぅ!悲しそうな顔が胸にくる!)


壊れて真っ暗になったスマホを見て、憂いを帯びた目をする聖。自分が原因なだけに、見て見ぬふりも出来ない星奈は、覚悟を決める。


星奈「わ、わかりました!私で良ければスマホになります!いや、スマホにならせてください!」
聖「いいんですか?」
星奈「元はと言えば、ぶつかってしまった私のせいですし。有名俳優(しかも推し)の天野星さんにご迷惑はかけられません!なので、私で良ければ自由に使ってください!」
聖「……」


星奈(へ、変な事を言っちゃったかな!?)


冷や汗を流す星奈。だけど聖は顔に笑みを浮かべて「良かった」と嬉しそうに笑う。


聖「奥外さんにそう言って貰えて本当に嬉しいです。じゃあ――スマホが直る間、よろしくお願いしますね」
星奈「はい!」


(回想終了)


〇聖のマンション二人きり(続)


星奈(そんな経緯があって、さっそく演技の練習に付き合ってるわけだけど……)


聖「星奈、いくら突っ立ってるだけって言っても、目くらいは閉じてくれると嬉しいな」
星奈「~っ!」


聖は壁ドンをして、星奈にキスを迫っていた。もちろん演技の練習だと分かっている星奈だけど、目の前に推しの顔があり、今にもショート寸前になる。


星奈(ぎゃああああー!!色気がヤバい!これが本当に伊利屋聖くん!?あのガリ勉メガネの冴えない系男子の伊利屋聖くん!?)


聖「目を閉じて、星奈」
星奈(しかも丁寧語とれてるし、いつの間にか名前呼びだし!)


震える体に力を入れて、ギュッと目を瞑る。すると、ガッチガチに緊張した星奈を見て、聖は笑った。


聖「ふふ、可愛いね」
星奈(ん、今、)


すると、聖は星奈の唇に少しだけ自分の唇を当てる。ちょん、と一瞬の事だった。


聖「今日は、この辺で許してあげる」
星奈「え、今、なんですか?今の、なんですか!?」


星奈(唇になんか当たった!?髪の毛?目を瞑ってたし緊張していたから、分からない!)


星奈の考えている事が手に取るように分かる聖は、また「ふふ」と意味深な笑みを零す。そして、星奈に目を明けるように言って、長い人差し指を、自分の薄い唇にもってきた。


聖「さっき何があったかは、内緒」
星奈「う、え……?」
聖「ふふ」


綺麗な顔の聖に笑われ、羞恥心で逃げたくなる星奈。だけど「スマホを貸してほしいな」と言う聖の声で、我に返る。そして星奈は、聖の目の前に、ちょこんと正座をした。


聖「星奈……何してるの?」
星奈「え、だってスマホを貸してほしいって」
聖「言ったけど……」
星奈「今は私がスマホなんですよね?」
聖「……」
星奈「……」


星奈(あ、これ。完璧に間違えたやつだ……!!)


星奈「すみません!すぐに私のスマホを準備しますね!」


ポケットを探ってスマホを聖に差し出す星奈。「どうぞ!」と渡すと、そこには――


聖「……」
星奈「えと、あの……?」
聖「ごめん、さっきの星奈が……あまりにも可愛くて……」


言いながら、顔を真っ赤にする聖。星奈が物珍しそうにじーッと見つめると、聖は腕で顔を隠した。


聖「ちょっと、しばらく見ないでくれると嬉しい……」
星奈「え、ぇ……えぇ……?」


同じように赤くなって照れる星奈。
そんな二人の間にあるのは、契約関係?

それとも――


(第一話 完)