アンコール マリアージュ

 やがて寮に到着すると、真は車を降りてから素早く通りの様子をうかがい、不審者がいないか確認した。

 真菜は明るい声で、ありがとうございましたー!と運転手に声をかけている。

 が、夕べ襲われた場所にちらっと目をやると、急に顔を強張らせた。

 真はそっと真菜の背中に手を添える。

 「ほら、行くぞ」
 「あ、はい」

 二人並んでポストの前に立つと、中から郵便物を取り出す。

 (特に不審な物はないか…)

 自分宛の手紙を確認してから、隣の真菜の手元を覗く。

 真菜の手にした手紙も、特に怪しい物はなさそうだ。

 安心した真は、ふとエントランスの脇に置かれた観葉植物に目をやった。

 頭の中に、防犯カメラの映像が蘇る。

 (ポストに手紙を入れていたあの人物、確かこの観葉植物と同じ背の高さだったな…)

 目を閉じて、映像を思い出す。

 間違いない。確かにこの木と並んだ時、同じ高さだった。

 今度は、封筒を見ている真菜に目を移す。

 観葉植物よりは、少し真菜の方が背が高い。

 「お前身長いくつだ?」
 「え?165cmですけど…」

 顔を上げて答える真菜の前に、ぴたっと近付いて立ってみる。

 (さっきの新婦は、確か俺の胸の辺りだった。真菜よりは、やはり少し背が低い。という事は…)

 あの手紙をこのポストに入れたのは、おそらくさっきの新婦。

 だが、一体なぜ?そして夕べの男は?

 じっと考え込んでいると、胸の前でくぐもった声がした。

 「あのー、真さん。もの凄い至近距離で、私の前に立ちはだかっているのはなぜ?」
 「ん?ああ、すまん。さ、行くぞ」

 もう一度周囲に目を走らせてから、真は真菜とエントランスに入った。