アンコール マリアージュ

 次の日。
 営業時間を終えたフェリシア 横浜のオフィスに、前触れもなく現れた真を見て、皆は仰天する。

 「専務!どうされましたか?な、何かこちらに不手際でも?」
 「いや、違う。真菜は?」
 「真菜は?!真菜は!え、ま、真菜は今、サロンでお客様と打ち合わせ中でして…」
 「分かった。じゃあ、表で待っていると伝えてくれ」

 踵を返すと、はあ…と気の抜けた声で見送られた。

 オフィスを出て、停めてある車に戻りながら、ふと振り返る。

 通り沿いのサロンはガラス張りになっていて、日が暮れると明るいサロンの中の様子がよく見えた。

 真菜と新人の女の子が、にこやかに向かい側のカップルに話をしている。

 こちらからは背中しか見えないそのカップルに、真は妙な顔で見入った。

 (何だろう、どうってことない二人だ。なのになぜか気になる…)

 口元に手をやり、じっと考え込む。

 頷きながら、時折顔を上げて熱心に話を聞いている新郎とは対照的に、じっとうつむいたままの新婦。

 (上着も着たままじゃないか。ん?上着…)

 セミロングの髪に、焦げ茶色のスプリングコートを着た新婦の後ろ姿を食い入るように見ていた真は、やがて、あっ!と声を上げた。

 (あの人、あの防犯カメラに映っていた?)

 いや、まさか、という思いと、そうに違いないという思いが交錯する。