アンコール マリアージュ

 どれくらいそうしていたのだろう。

 ふと時計を見ると、もう日付が変わる頃だった。

 「そろそろ休んだ方がいい。自分の部屋に帰れるか?」

 そう言うと、真菜はビクッと身体を震わせる。

 暗い部屋で1人で夜を過ごすのは、今は無理だろう。

 「じゃあ、君が寝付くまで、俺が外で見張ってるよ」
 「え?外でって?」
 「君の部屋の前で。誰も入って来ないように」
 「そんな、真さんを外で見張らせるなんて出来ません」
 「じゃあ、1人でも平気か?」
 「それは…」
 「だろ?いいから、さ、行こう」

 真は真菜の鞄を持つと、肩を抱きながら1つ下の階に下りた。

 鍵を開けて玄関のドアに手をかけた真菜が、心配そうに真を振り返る。

 「大丈夫だから、ほら、入りな」
 「でも…」

 そう言って少し考えてから、真菜は顔を上げる。

 「やっぱり中に入って下さい。ベランダから誰か入って来たらって思うと怖いし…」
 「ああ、確かに」

 真は頷いて、真菜に続いて部屋に上がった。

 「すみません、殺風景で。あ、今コーヒー淹れますね」
 「そんな事は気にするな。それにさっき飲んだばかりで、お腹もちゃぷちゃぷだ」

 すると真菜は、驚いたように真を見上げてから、ぷっと小さく吹き出した。

 「なんだ?」
 「だって、うふふ、真さんってば、お腹がちゃぷちゃぷって」
 「それが何だ?」
 「だって可笑しくって。真顔の強面でちゃぷちゃぷって、あはは!」

 堪え切れなくなったように笑い出す。

 「何が可笑しいんだ?いいから早く寝ろ!」
 「はーい。その前にお風呂入ってきます。あ、勝手に帰らないでね!ちゃんといて下さいね!」
 「分かったから、早く行け!」

 ふふっとまだ笑いが収まらない様子で、真菜はバスルームに入って行った。